共同利用申請について
生態学研究センターは、生態学・生物多様性科学における共同利用・共同研究拠点として認定されています。
シンバイオトロン棟の利用を検討される方は、生態学研究センターHPも合わせてご覧ください。
シンバイオトロン棟の利用について
利用実態把握のため、利用予定の提出にご協力ください。
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匂いを介した植物間コミュニケーションは微生物との共生関係を変える
植物が動物から食害などのダメージを受けると、葉から匂い放出されます。周囲の植物はこの匂いを受容して防御を高めることで、将来の食害されることを防ぐことができます。このような現象を匂いを介した植物間コミュニケーションと呼びます。この研究では、匂いを受容したダイズでは、防御機能(サポニン濃度)が高まるだけでなく、根の根粒の数が減少することを発見しました。さらに、匂いを受容したダイズが生育した土壌では、炭素と窒素含有量の比率が変化していることが分かりました。このことから、地上部で起きた匂いを介した植物間コミュニケーションが、植物の防御物質の増加をよって地下部での植物と微生物の共生関係や土壌環境をも変化させていることが示されました。 |
Takahashi Y., Shiojiri K., Yamawo A.* (2021) Aboveground plant-to-plant communication reduces root nodule symbiosis and soil nutrient concentrations. Scientific Reports 11; 12675.
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つる植物は自身への巻きつきを回避できるか?
つる植物が自分に巻き付いているところを見たことはありますか?自身か他の個体かを見分ける能力を自己認識能力と呼びます。今回、私たちの調査・実験からブドウ科のヤブガラシやウリ科のゴーヤ、トケイソウ科のパッションフルーツのといったつる植物の巻きひげが自己を認識し、自己への巻きつきを回避する自他認識能力を備えていることが明らかになりました。そしてこれは、植物の地上部において自他認識が見つかった初めての例となりました。 |
種子は同種の葉を手がかりにして「安全地帯」で発芽する
植物の芽生えは、発芽後すぐに既にその場所で成長してる他の植物と土壌養分などの資源をめぐる競争に曝されます。そのため、芽生えが生き残るためには、競争相手が少ない環境で発芽することが重要なポイントになります。 空き地などでもよく見られるエゾノギシギシでは、古くなり落葉した葉に他種の植物の発芽や成長を抑える物質が含まれることから、大きな親株の周囲は他種の植物が生育しにくい環境となります。エゾノギシギシの芽生えは、このような環境でも生き残り成長できることが知られています。つまり、エゾノギシギシの芽生えにとって、大人のエゾノギシギシの周囲は、他種植物が存在しない「安全地帯」となっているのです。この研究では、エゾノギシギシの種子の発芽が、同種の葉から浸出する水溶性の化学物質によって促進されることを発見しました。さらに、今回の結果をふまえて、これまで報告されてきた生物的環境に対する種子の発芽応答について整理したところ、種子は主に発芽率に関する「発芽の促進・抑制」と発芽タイミングに関わる「発芽の加速・遅延」の4つの応答を示すことで、様々な生物的環境に対応していることがみえてきました。 |
アリが減るとナメクジが増える?
住宅街や草地、河原や森の中まで、アリはあらゆる生態系に生息しています。アリ類は最も優占している昆虫にもかかわらず、アリ類が生態系や生物群集に及ぼす影響については未だよくわかっていない状況です。この研究では、温帯の草地からアリ類を人為的に除去し、生物群集の変化を調査することで、アリ類が温帯草地の生物群集に及ぼす影響を調べました。その結果、アリ類が減少した場所では、ナメクジ類の活動が活発になることが明らかになりました。アリ類とナメクジ類はどちらも草地で頻繁に観察される生物ですが、この研究で初めて両者の関係性が明らかになりました。 |
Ohwada K., Yamawo A.* (2021) Functional roles of ants in a temperate grassland. The Science of Nature 108: 56.
葉の損傷は根っこの伸び方に影響する?
植物の葉脈を傷つけると、土壌中の栄養分を効率的に吸収するための根の生長が阻害される現象を発見しました。植物は、多くの動物に餌として利用され、葉を食害されます。本研究の成果は、食害による葉の損傷が、単に光合成器官を減少させるだけでなく、土壌栄養分の吸収効率をも低下させてしまうことを意味しています。また、動物に葉のどの部位を食べられるのかによって、植物の栄養吸収効率に与える影響が異なる可能性があります。今後は、植物の情報伝達機構と動物による食害様式や部位を組み合わせて考えることで、動物による食害が植物にどのような影響を及ぼすのかを正確に予測することができるかもしれません。 |
Yamawo A.*, Ohsaki H., Cahill Jr, JF. (2019) Damage to leaf veins suppresses root foraging precision. American Journal of Botany, 106: 1126-1130.
植物はパートナーとなるアリを認識できるか?
植物には、葉などから蜜を分泌して食物を提供するかわりに、葉を食べる植食者から護ってもらうといった共生関係をアリと結んでいる種がいます。このような植物をアリ植物呼びます。アリがいる時には、蜜を出せば護ってもらえますが、アリが訪れていない時に蜜を分泌すると逆に植食者を誘引してしまうなど、悪影響が生じます。そのため、アリ植物はアリが訪れているか否かを認識して、蜜の分泌量を調整しているかもしれません。このアイディアを西日本ではおなじみのアカメガシワというアリ植物で検証してみました。するとアカメガシワはオオズアリが訪れると蜜の分泌量を増やすことがわかりました。さらに、アリが訪れた際には化学防御として機能するポリフェノールの含有量を低下させることがわかりました。つまり、アカメガシワはアリが来訪すると化学的な防御からアリに頼った防衛へ切り替えているようです。アカメガシワがどうやってアリを認識しているのかは今後の課題です。 |
Yamawo A., Tokuda M., Katayama N., Yahara T., Tagawa J. (2015) Ant-attendance in extrafloral nectar-bearing plants promotes growth and decreases the expression of traits related to direct defenses. Evolutionary Biology, 42: 191-198.
種子は複数の環境情報を認識できるか?
私たちが生きる世界は、様々な環境刺激で溢れています。私たちは、食物を獲得し、外敵から逃れ、配偶者を得て繁栄するために、必要なときに必要な環境刺激を情報として利用する能力を進化させてきました。 この研究では、植物の種子が競争相手となる他種と同種の存在という2つの情報に基づいて、発芽タイミングを早めることを発見しました。さらに、他種の種子が存在する場合には、同種の種子との発芽の同調性が高くなることもわかりました。これらの結果は、種子 が何らかの方法で互いに発生段階に関する情報を伝達し合っていることを意味しています。 |
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